日浦孝則のシネマ・パラダイス(福井のタウン誌"月刊ウララ"に連載したものです。)
(1995年あたりの書き物です。)
日浦孝則のシネマ・パラダイス
Part 1 ~映画とはほとんど無縁な少年時代編~
こんにちは! classの日浦です。はっきり言って、そんなに映画に詳しいと言うわけではないけど、僕は映画が好きです。
暇が出来ると行きつけの酒屋で辛口の赤ワイン、伊勢丹の地階のチーズ売場でカマンベールチーズをかって来て、楽しみにしていたビデオを見る!これが僕の至福と時かもしれない。すみません、レンタルビデオ専門なんです。映画館で映画を見たのは数えるほどしかないって事はちょっと恥ずかしいけど、この際それはおいといてと。
僕は瀬戸内海に浮かぶ大芝島という島で生まれ育った、人口は当時500人ほどで、縮尺5万分の1の地図にやっと載ってるくらいの小さな島です。うちの家の回りに日浦という姓の家が20軒あったので。「日浦さ?ん」って呼ぶとみんな出て来ちゃうって感じの島です。 はじめて映画を見たのは、安芸津という本土の小さな町の映画館。ふだんその映画館は、“にっかつピンク映画3本立て”って感じのとても魅力的な映画館。
夏休みに近所の子供達と一緒に弁当もって、船に乗って行って見たのは“ガメラ”、“巨人の星”、いわゆる“夏休み子供映画大会”みたいな物。今でこそ、例えば“ドラエもん”なんかはちゃんと映画用にテレビとは違うストーリーのものだけど、この“巨人の星”はテレビでやった物をつないだだけで全然わくわくしなかった。
それからその映画館に、近所の中学生のおにいちゃんに連れていかれて観た“回天”という戦争ものの映画。あんまり覚えてないけど、当時のいわゆる“アイドルもの映画”?だったんだと思う、主演の“山田太郎”さんが特攻隊員の役で死んでいくんだけど、乗るのが“ゼロ戦”じゃなく“人間魚雷”。悲しくて恐い映画だった、教官役の確か“夏木勲”さんが特に恐かった。
それからあと観たと言えば、家族に連れられて見に行った“日本沈没”、高校生のとき“ロッキー”、彼女の涙を初めて見て映画よりドキドキした“ラストコンサート”、悪友に誘われて観た映画でタイトルは忘れてしまったが“阿部さだ事件”を扱った当時にしては結構ハードな映画。
観た映画と言えばそんなくらいで、あんまり映画には縁も興味もなかった少年時代だったかなあ。ところがそののち、映画にすっかりはまってしまうのですが、その話はまた次号で。
Part 2 ~映画にハマッたバイト時代~
25歳のとき、京都でのバンド活動に見切りをつけて、バンドのメンバー3人で上京して共同生活を始めました、もちろんプロのミュージシャンになることを夢見て!。
当時住んでいたアパートは部屋が2つしかなかったんだけど、その2部屋をを3つに割って住むという暮らし、とうぜん部屋と部屋の間には敷居があるわけ、その敷居の部分を含むスペースを割り当てられたのが“林くん”。
そしてそれぞれにバイトを見つけたんだけど、その“林くん”がレンタルビデオ屋さんの店員になったんだよね、小さな店だったので彼はいきなり店長みたいなもので、店の鍵をもってるわけ!。ある夜、その鍵を借りてそのレンタルビデオ屋さんへ忍び込んだのです。もうあらゆるビデオが見放題!、洋画、邦画そしてエッチなビデオも、わっはっは、もちろんタダです。
最初に見たのは確か、“バック・ト蓜ー・ザ・フューチャー”、入門編にはもってこいの映画でした。おもしろかったなあ!、あの時のその感じは今でもはっきり覚えてるね。見たことのない世界を想像を越えて見せてくれる、しかも見ているときはその世界に自分が入り込んでる。
それがきっかけで最初にハマッたのはSF映画、ハラハラ、ドキドキ、わかりやすくていいよね、SF映画はね。いろいろ見ていって、それで“ターミ・ネーター”でまた胸ぐらをつかまれてしまった。どちらかというと僕は文化系じゃなくて理科系なんですね、だから特殊効果ものがけっこう好きみたいです。最近では“ジュラシック・パーク”なんて、ここまできたか!みたいなCGを使ったものまで出てきちゃって凄いね。
僕のうちのコンピューターもパワーアップしたので音楽や書き物だけじゃなくて、いよいよ“デスク・トップ・ムービー”みたいなことをやってます、簡単な特殊効果なら工夫次第で自宅である程度出来て楽しめます。いつか自分でも映画を作りたいなあ、なんて大それた事を考えてたりして、そういえば“夏にかかるWedding Song”のプロモーションビデオの編集、僕もやらせていただきました。
ちなみに僕がコンピューターに興味を持ったのも“エレクトリック・ドリーム”という、こぼれたシャンペンでコンピューターが意志を持つことになって、自分で音楽を勝手に作っちゃうという映画、これを見て次の日、コンピューター衝動買いしてしまいました。
淀川長治さんの「映画ってほんとにいいですね。」っていう言葉の意味がやっと分かり始めたあの頃でした。次回は、僕のお勧め映画などを紹介します。
Part 3 ~日浦孝則・おすすめ映画編~
いよいよ今回で、最終回になってしまいました。実は、このコラムの自分なりのタイトルは、”日浦孝則のシネマ・パラダイス”、これは僕の好きな映画のベスト3に入る”ニュー・シネマ・パラダイス”からいただいたもの。
この映画、映像がとても巧みで綺麗、そしてその映像にからむ”エンニオ・モリコーネ”の音楽がノスタルジックなストーリーをいっそう盛り上げてくれます。まだ見てない人は少ないと思うけど、まだの人は勝手にせいー、いや是非どうぞ。”アルフレーッド!”って、ついつい誰かを呼んでみたくなるでしょう。ちなみに完全版も出てますが、これは見てはいけない!…..。(とこれを書いた当時は思ったが、また完全版は完全版で作者の一番意図する所だと、これも今は納得です。)
”ベスト3”って言ったので、「他の2本は何なの?」という方、いいところに気がつきました、紹介しましょう。
その二は”ライトスタッフ”という映画。この映画は、1940年代後半に初めて音速の壁を破ったジェットパイロットから、1950年代末にマーキュリー計画に選ばれた7人の男たちとその妻たちを描いたドラマ。人と人との連帯感や、男たちのプライドの守り方が、とても爽やかで好きなのです、うーん、とても一言では表せないなあ。男優さんと言えば、前は”ロバート・デニーロ”がすごいなあって思っていたんだけど、この映画に出ている、”エド・ハリス”ってけっこうおすすめな役者さん。
というわけで、その三は、その”エド・ハリス”さんも出てる”プレイス・イン・ザ・ハート”という映画。実はこの作品に彼が出てるのは、あとで見返してみて解ったんだけど、それもそのはず、この映画ではさっきの”ライトスタッフ”での役とはまるで反対の”情けない男”を演じてて、うーんなかなか奥行きを感じさせるねえ、エディー!。
”サリー・フィールド”が演じる未亡人エドナが、家族たちと逆境を明るく根性で乗り越えていく姿に感動、気持ちよく泣けます。
以上、僕の好きな映画ベスト3を紹介しました。まだいっぱいオススメの作品があるけど、とても書ききれないです。
世界中の映画人よ!、僕のワインの消費量を増やすべく?これからもたくさんの感動する映画を待ってるぜ!、あっ失礼、まってま~す・。(・、入れてみました。)
最後に、映画と映画を愛する人たちに”乾杯!”。
日浦孝則 おすすめシネマ (その2バージョン)
美女と野獣
僕はバラードが好きだ。心に訴えかけてくる、美しいメロディー、涙を誘う歌詞。いつだったか‘バラードの王道‘って何だろう、方程式はないのかなあ?と本気で考えていたわけ、でも答は出なくてねえ。
映画にも必ず涙を誘う‘ドラマの王道‘ってものがあるんじゃないのかなあ?。それがわかれば意識的にバラードも泣けるドラマも創れるのにと、ずいぶんナメた事を考えてたりして……。
そしてこの‘美女と野獣‘、これはアニメじゃないね、実写のような立体感と存在感。何度見ても泣いてしまうんだこれが。これは見ないと損だよ。
ライトスタッフ
米ソを中心とした男達の空の物語、カッコイイ!。音の壁を破る競走から宇宙船へと、時代と共に最先端のパイロットの世界が移っていく間に起こるドラマを、エドハリス、スコットグレン、サムシェファード、デニスクエイド等の個性派有名スターが多数競演してるんだ。何と言っても、大学へ行ってないことで宇宙船のパイロットにならずジェット機の極限を極めようとするイエガー役のサムシェファードがとってもいい(ブチエエ!)。男のロマンがこの映画にはあるネ。
プレイス・イン・ザ・ハート
監督は‘クレーマー・クレーマー’のロバートベントン。1930年の大不況下、夫の突然の死に戸惑いながら、一家の主としてサリーフィールド演じるところのドナが初めての綿作りに挑むわけ、まあ借金もあるし、お尻に火が付いちゃったんだね。通りすがりの使用人役のダニーグローバー、家計の足しにと銀行家に押し付けられた盲目の下宿人役ののジョンマルコビッチ、こいつがグー!、姉の亭主役のエドハリスなんかが泣かすんだよね。
あんまりみんな知らんけど隠れた名作ダヨ、超超オススメ!。その他のドラマでは‘ニューシネマパラダイス‘、‘ボンヌフの恋人‘、ちょっと重いけど子供が出てきて辛い泣きの‘ジャーニーオブホープ‘なんかええよ。